幻の湖〜神が宿りし映画

 さて、本日は無事に記事を書き終えることができるのか不安でいっぱいです。いえ、正直に申し上げますと、はなからまとめ上げようと思ってないのかもしれません。
 皆さんは、「究極の駄目映画」を一本挙げるとしたら何をお選びになるでしょうか?「最高にコケた駄目映画を知りたいッ」ワタクシがそんな欲求に駆られたのは、今からちょうど4年ほど前のこと。ネットというパンドラの箱を使い、先人の知恵を拝借したところ、驚くほど簡単にこの映画に辿り着くことができました。そう、

「幻の湖」1982年公開・〈東宝創立50周年記念映画〉です。
ここから先はネタバレがありますんで観覧要注意です。
最初に御断りしておきたいのですが、何もプロペラは「駄作をモノ笑いの種にしよう」としているわけではないということ。つまり、駄作を笑うために手を出したはずが、すっかりハマってしまったということです。
 事実この映画、162分もあるのですが、今まで何度となく観てしまっています。
 ストーリーですが正直、よく分かりません…主人公の道子は「お市の方」という源氏名トルコ嬢をしております。
(トルコが分からないヒトはお父さんに聞いてみよう!)
そんな道子の生きがいは愛犬のシロと琵琶湖外周をジョギングすること。
(琵琶湖を眺める道子)
ある日、愛犬のシロが何者かに殺されてしまいます。

(道子とシロは常に一緒だったのだ)
道子はやっとの思いで犯人を突き止めます。相手は著名な作曲家で道子と同じくジョギングが趣味。道子は決心し、ジョギングで犯人を追い詰めようとします。

(犯人に迫らんと激走する道子)
しかし、すんでのところで、犯人にスパートをかけられ、かわされてしまいます。
その後、傷心のまま琵琶湖に戻った道子は琵琶湖で以前1度会って心惹かれていた笛を奏でる男性と再会。そこで400年前に琵琶湖で起こった男性の持つ笛にまつわる男女の悲劇を聞くことになります。

(笛の男性の話を聞き、職業上「お市の方」である自身と琵琶湖との因縁に想いを馳せる道子)
そんなある日、道子の働いているトルコに犯人が客として訪れます。怒りを抑えられない道子はここぞとばかりのリベンジに。「お市の方」の仕事着のまま、包丁を構えて、琵琶湖周辺を激走します。そして

今回は、見事、犯人を追い抜いてゴールします。

「シロ、やったわ…」、極度の疲労歓喜の中、恍惚の表情を浮かべる道子。
と、これで大団円かと思いきや…

懐から包丁を出して、二刺しした瞬間…

スペースシャトルの打ち上げ映像に…
常人には理解できない展開の早さに戸惑っていると…

宇宙服を着た笛の男が、笛を手に宇宙空間へ。そのまま、宇宙から地球を俯瞰し、琵琶湖の上にその笛をたむけて映画は幕を閉じます。

以上があらましなわけですが、伝わりましたでしょうか?伝わりませんよね…
記事を書いていて思ったのですが、きっと私は道子(南條玲子さん)が愛おしいのだと。もうひたすら我武者羅に走ってるんですよ。映画初出演でいきなり主役に抜擢されたそうで…もうただただ初々しい。
そして、お金の掛け方といいますかスケールが半端ない。制作期間3年ですよ、どのタイミングでかみんな思ってたんでしょうか…「あぁ、これ駄作になるわ…」いや、それともみんな過剰にアドレナリンが出まくって、成功を疑うことなくクランクアップまで到達できたんでしょうか…
機会があれば、是非この作品に関わった人々に聞いてみたいです。
ここ数年は邦画が豊作だなんて言われてますけど、本当の意味で観るべきものはどれくらいあるのか…映画は祭ですからね、命がけでやってほしいですね。小さくまとまるなよ、映画業界!
映画が映画として存在することの価値が認められていた善き時代の愛すべき駄作でございました。